彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた -66ページ目

6.本当の気持ちを知りたくて

二人の男に揺れている。

男友達かバーテンダーか。

私がどう足掻こうが、一方には別に好きな人がいて一方には彼女がいる。

どうぞご勝手に、私が勝手に好きになりゃいいじゃん。

はぃはぃ、私はあなたが好きですよ。

それが何か?

何で私はそれができないんだろう。

フラれるのが怖い?

違う。

どっかで自分に自信があるのだ。

その気になれば彼氏の一人や二人できますよ。

結構私はモテるんだから。

言い寄ってくれる男性なんて沢山いるんだから。

私が好きって言ってるんだよ。

当然、断りなんてしないよね。

でも、自分で解かってる。

それが、本当にモテているという事とは違うこと。

本当に好きな人からは好きになってもらえない。

その気がないフリしていれば男は勝手に寄ってくるけれど、好きになったら逃げられる。

軽い女の象徴。

うん、やっぱり怖いのかもしれない。

好きにならなければ、もしかしたら私を受け入れてくれるかもしれない。

そんな甘え。

これが繰り返しを生む。

男の浮気相手の都合のいい女。

何、成り下がってんだろう・・・。


1年ほど会っていない友人に久しぶりに電話をしてみた。

「ね、久しぶりに食事でもしない?最近お気に入りの店があるねん」

「うん、いいよ。最近の話聞かせてよ」

きっとこの友達とはまた1年近く会わないだろうと思う。

だからこそ、今日の日に相応しい。

どんな話をしても、丸ごと持ち帰ってくれる。

むし返される事もないし、きっと次に会う頃には忘れていてくれる。

誰にも話せない話を聞いてもらえる大切な友達の1人。

彼女もまた同じだろう。

彼女の話も「実は」の話が多い。

実は・・・この続きが自分でも知りたくて彼女を呼び出した。


バーは金曜の夜とあってとても賑わっていた。

いつもの雰囲気が何処にも見当たらず、居酒屋ではないのかと思うくらいだ。

奥のテーブル席を勧められ、カウンタの前を通り過ぎる。

視界に入ってきた二人。

私は目を合わせなかった。

今見てしまったらきっと私は嘘をつく。


「せのり!」


声を掛けられた。

声の元を探すと、ソコには親友がいた。

中学生の同級生4人と飲み会をしていたらしい。

何で私は誘われなかったんだろうか。

「あんたも来たん?一緒に飲もう~よ~」

かなり酔っているみたいだ。

「うん、また後でね」

「えー、今、呼び出そうかと思ってたところなんよ~」

あぁ、ウザイ。

酔っぱらいはこれだから嫌なんだ。


「おぅ~、せのりちゃ~ん」


また声を掛けられる。

今度は男友達の友達だった。

コイツも半端なく酔っている。

「ねぇ、一緒に飲もうよ~」

場所間違えたか!?

こんな場所で、私は「実は」を見つけだせるんだろうか・・・。


やっとの事で奥のテーブル席に着くと、結構落ち着いた雰囲気に包まれていた。

カウンタを越えて、店の構造上少し奥は広くなっていた。

何だか別空間のような気がしてくる。

カウンタ付近で騒いでいる人達の群れが、とても遠くに感じられた。


「いらっしゃいませ、お飲み物何にしましょうか」

「何にする?」

「私、これにする」

「お酒飲むの?私も飲んじゃおうかな」

「烏龍茶じゃなくていいの?」

「うん、何か飲みたい気分やし。同じの二つでいいよ」

「二つで・・・少々お待ちください」


お酒飲んだら、少しは私も素直になれるだろうか。

理性ぶち壊して暴れまくってるあの人達みたいになれるだろうか。

無理して頼んだカクテルに少しの期待を込めてみた。


「お待たせしました」

カクテルを持ってきたのは、バーテンダーの彼。

「こちらが、お友達ので・・・こっちがお前の」

「何?同じでしょ?何、ウチのに何か入ってんの?やめてよ~」

「その逆、お前のは何も入ってない、只のジュースだよ」

「何それ!」

「お前にお酒は飲ませられないの」

「げ、マズッ」

「当たり前。ただ、アルコール分抜いただけのカクテルやもん」

「こんなん飲めんよ」

「飲みたかったらソフトドリンクでも頼めば?!」


何?何なのよ。

人を子ども扱いして、年下のくせに。

私の期待はどうなっちゃうの。


「かっこいいね、彼」

「うん、彼女いるんやって」

「せのりちゃんの友達って皆かっこいいよね。でもいつも彼女いるし」

「うるさ~い、それ聞きたくないし」

「あれやろ、実際友達になろうじゃなくて、初っ端ねらってるっしょ?」

「バレた?!って、そんなことないよ。それにあの人は、まだ携帯も知らんしね」

「嘘!めずらしくない?」

「人を何やと思ってるわけ・・・」


と、言ったものの珍しいかもしれない。

私、何でバーテンダーの携帯聞かなかったんだろう。

いきなり彼女が居るって知ったからだろうか。

それって、やっぱり友達じゃなくて、狙いに掛かってるって事だよな。

男友達もそうだったのかもしれない。

友達になんてなる気更々なかったのかもしれない。

友達友達って口ではいってるけど、思いっきり逆ナンして狙ってた・・・よな。


「好きな人いるって言ってたやん。誰?」

「ちょっと!キョロキョロしない!」

そう、私は自分を確かめる為に、彼女にそう言っていた。

よし、言わなきゃだ。

さ、何て言う?私・・・。

「今の人?」

「う~ん」

「もったいぶらないでよ~」

そっと、バーテンダーの彼を盗み見た。

いつもと変わらない無愛想な顔をして、目をつむっているように視線を落としていた。

誰にも笑わないんだね。

目の前はあんなに楽しそうにしているのに。


「いらっしゃい」

男友達が厨房から出てきて声を掛けに来た。

「騒がしいけどゆっくりしていってな」

そう言うとそそくさと退散していった。

そっけないな。


「ねぇ、今の人?」

「え?!」

「好きな人だよ~。多分どっちかだよね」

「なんで?」

「カッコいいっていったら、この二人くらいじゃない?」

鋭いな。

短期間でズバリ二人に絞ってきた。

話が早いと言ったらそうだけど・・・どうしよう。

「ねぇねぇ、今来たコックさん誘って今度遊びに行こうーね~」

「え、うん、いいけど」

「ほんとに?」

「何?狙ってる?」

「だって、せのりちゃんの友達かっこいいしね」

「あいつも好きな奴いるで」

「な~んや。じゃ、バーテンダーさんと友達になりたいな」

「ダメ!」

うわっ!ビックリした。

私、何ムキになってんだろう。

一気に頭に血が昇ったかと思えば、一気に血の気が引いた。

くらくらする。

このカクテル、本当はお酒はいってたんじゃないの・・・。

頭が痛いよ。

「せのりちゃん!彼女がいてもいいじゃん。好きって気持ち大切にしなよ」

「うん・・・」

「あれでしょ。かっこいいだけじゃないんでしょ?」

「そりゃ・・・」

「優しかったもんね。せのりちゃんの事よく知ってるって感じだった」

「私は・・・あの人の事何も知らないけどね・・・」

「知ろうとしてないからでしょ?」

「まぁね、それに、私なんか皆に勘違いされてるし・・・」

気持ちがいい。

心がふわふわする。

このままお布団に入って眠りたい。


「せ、の~りちゃん!」

男友達の友達が私たちのテーブルへ絡んできた。

「聞いたよ~、あいつの事すきなんやって?デートもしたんやろ~」

「え、何それ、知らんし」

「隠さない、隠さない!俺は応援するよ。絶っ、ヒック。絶対、うまくいくってよ」

「はぁ、それ誰にも言わないでよ。迷惑だから」

「はぃはぃ、言いませ~ん」

何処まで話が広がってるんだろう。

好きかもしれないと思った迷いが、思わせぶりな態度にでてしまって、こんなに大きくなってしまうなんて。

バーテンダーの彼にとった、上辺だけの会話。

全ては私が悪かったのかな。


「何?今の?」

「うん、こんな事になっちゃってんだよね・・・」

友達は厳しかった。

自分の所為だと思うなら、伝わるようにしっかりした態度をこれから取る事とお叱りを受ける。

ごめん、それはできないよ。

好きではない、態度ならできるけど・・・あの人が好きだなんて誰にも気付かれたくない。

きっとまた、こんな騒ぎになっちゃうんでしょ。

人の不幸が大好きなんだ。

フラれる姿をみんな、楽しみにしてる。

うまくいく恋に誰も応援なんてしてくれないんだから。

困難であればある程人は集まる。

彼女がいる人が好きだなんて、誰にも知られたくない。

本人にも。


失いたくないんだ。

好きだって気付かれて、逃げられるのが怖い。

だったら、友達の顔をしている。

そしたらずっと側に居てくれるよね。




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5.男友達と映画デート

先日、男友達と約束していた映画。

これはデートなんだろうか・・・。

友達同士のと言った手前、デート気分ではなかったけれど、少しやっぱりドキドキした。


車で家まで迎えに来てくれた男友達が、私を少し意識しているのが解かった。

好印象?そんなものはない。

気のない女性から行為を寄せられて少し迷惑している、そんな感じ。

私は一体どんな目でこの男友達を見ているんだろう。

自分では解からずに、周りはそれを受け取ってる。

周りの人間が作り上げた恋という枠組みにはめられ、少し腹立たしさも感じた。


こいつ、何うぬぼれてんだろう・・・。


不思議と話す事はなかった。

友達でさえなくなってしまったのかもしれない。

興味が全くない。

でも、少し頑張っちゃったんだ。

もし、この男が私を好きになったら、私も好きになれそうな気がした。

ねぇ、私の事好きにならない?

でも、無理だって解かってた。

この男に好きな人が居るからとかそんなんじゃない。

彼女の居ない男とは私を好きにはならない。

そんな、私の中の勝手な定義からの判断。

友達・・・ね・・・。


映画を見終えて、何処にも寄らずにまっすぐ家に送ってくれた。

昔は結構遊んだのにね。

今じゃ全く遊べなくなってしまったんだね。

この時、コイツ嫌いっていう意識が生まれた。

恋?

そんなもの論外だと思った。

関係性とか2の次じゃない。

この男は私を私として見てくれなくなったわけ。

そりゃ、その人の勝手さ。

行為を寄せられたら友情は成り立たない、そう考えてるのかもしれないけれど、心閉ざされたら私は無理だ。

そう、私の勝手さ。

でも、好きになれたら良かったのにな・・・。


「楽しかったな」

男友達が車のエンジンを止めそう言った。

本当に思ってんだろうか。

「こうやって、二人で遊びに行くのもいいもんやな」

「そうか?」

「あ・・・うん・・・そうそう、このブレスかっこよくない?」

「え?あぁ、いいかもね」

「女の子がつけてもかわいいと思うねんな」

「ちょっと付けさせてよ」

「あ、ちょっと長すぎるかな・・・」

「頂戴よ」

「無理無理、めっちゃ気にいってるもん」

「じゃ、その指輪頂戴よ」

「えー、これも無理。グッチやで」

「グッチがあんたに何の価値があるんさ」

「ほら、思い出とか・・・」

「好きな人からでも貰ったん!?」

「いや、自分で買ったよ」

「ふ~ん」

「じゃ、これやるわ」

「・・・安っぽい」


男友達から貰ったスヌーピーのキーホルダーは、沢山ある中の1体で男友達が集めた中の一つだった。

このスヌーピーは捨てられたんだな。

少しスヌーピーに同情した。

こんなの貰わなければよかったかもしれない。

貰った代わりに、心を置いてきてしまった。

私の欠けた心を見つけ出そうとすると、いつも男友達にたどりつく。

恋してるんじゃないかと勘違いする。


私は誰も好きじゃない。




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彼女の居る人は好きにならない(補足)


【4.数学からの恋の補足】

もう、彼女の居る人は好きにならないんだ・・・。


私の恋愛暦は0に等しいかもしれない。

私が彼氏と呼んでいた男には、全て私以外の彼女が居た。

私が何番かなんて事は知らない。

男たちは私を彼女とは呼ばなかった。


好きなものは好き。

嫌いなら一緒にはいない。

この先どうなるか解からない。


うまいなー、口がうまいなー。

期待させちゃってるよ!

そんな言葉に乗せられてる自分は馬鹿だな。

結局未来なんてないのに。


彼女にばれたからという理由で去っていった男が居た。

正直、それだけの理由?って思った。

それが理由として成立するなら、私に彼女が居ることがバレた時何故彼女のもとから去らなかった。

私が許してしまったからなのか?

許さなかった彼女の勝ち?

きっと男は悪くない。

私が悪いんだろうな。


私は多分、浮気相手という立場だからじゃなく、男に弱いと思うんだ。

例え、私が彼女という立場だったとしても、浮気相手に持っていかれるような女だと思う。

嫌われたくない。

そんな想いがとても強い。


私は恋にライバルなんて要らない。

私以外の人がいる。

もうそれだけで試合放棄だ。

きっと男は私を選ばない。

だから・・・もう、女の居る男なんて好きにならない。


愛される恋がしたい。

自分の心に正直になれ?

傷つく心に恐れるな?

人事だよ・・・人事・・・・。

もう散々痛い想いしたもん。

そろそろ、安らげる恋愛してもいいじゃん。



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4.数学からの恋

映画を見に行く約束はしたものの、一向に日程が決まらず時は過ぎてゆく。

バーに遊びに行っても、何かこちらを意識しているような、そんな雰囲気が漂ってた。

知らないフリ。

私は、デートに誘ったわけではない。

ただ、遊びに行こうといっただけだ。

好きなものか!

勝手に勘違いしとけよ、この馬鹿。

こういう雰囲気って本当つまらない。

友達同士の恋愛が嫌がられるのが良く判る。

気まずい。


私も私で結構意識し始めてきた。

話かけるのに、少し照れる。

嫌だな。

周りの雰囲気で恋に落ちるなんて、つり橋原理そのものじゃん。

もっと自分の心に正直になりたいよね。

バーに行くの、躊躇っちゃう。


私はしばらくバーに行くのを控えていた。

会いたいな・・・誰に?

なんて、自分に突っ込みを入れながら、相変わらず自分の気持ちに気付かない毎日を過ごす。

携帯を手に取り、男友達に電話をかける。

こういう意味の解からない行動力だけはあるなと、我ながら関心する。


「もしもし?数学って解かる?」

「無理」

「即答やな!あの人に頼んで欲しい」

「先輩?何で?」

「現役やろ?」

「そうやけど・・・」

「何か問題あるん?」

「別に」

「ウチとあの人が仲良くなったらあかんの?」

「そうじゃないけど・・・」

「じゃぁ、いいやろ!」

「俺も行くで」

「何であんたがついてくるん?」

「だって、自分ら連絡先しらんやん」

「あ、そうか。じゃぁ、たのんだで」


私は、中学卒業後高校へ入学したもののやはり不登校で退学していた。

早かった。

1週間ともたなかった。

それから1年程ひきこもり、通信教育を受けていた。

この年がやっと卒業年で、単位を落とす事ができなかった。

数学を教えて欲しいというのは本当。

教科書を読んで、数学のレポートを完成させるには誰かの教えが必要だった。

誰でもよかった。

が、これほどにないチャンスだと思った。


「ごめんな、忙しいとこ」

「別にえぇよ。何処が判らんの?」

「此処の、∑と因数分解んとこ」

「見せて」

「因数分解はなんとなく解かるんやけどな、この∑の上下についてる小こい数字の意味が全く」

「ちょっと、待って!やり方思い出すから」

「すみませ~ん」


ファミリーレストランでバーテンダーの彼と向き合い座っている。

少しドキドキした。

この人の視線を落とした顔が私は好きだ。

母性本能をくすぐられるという奴なのだろうか。

抱きしめたくなる。

ふと、視線を右にやると、隣の席で1人黙々と自分の論文を書いている男友達がいた。

こいつ、1人なにやってんだろう。

別に用がないなら帰ればいいのに・・・。

こんなところで論文書いてる意味が解からない。


「おぃ、お前聞いてる?折角教えてやってるのに人の顔ばっか見て!」

「ばれた!?」

「ちょっと集中力なくなってきてるやろ、休憩しよっか」

「うん」

「でさ、あいつ何で此処に居るん?」

「さ?必死やな!」

「一緒に居れて嬉しい?」

「は?」

「なんでもない」

「おぃ、休憩するぞ!!そこの論文馬鹿!」

「うん・・・」

「必死や・・・」

「先輩、論文ちょっと見てくださいよ~」

「あとでな」


何か楽しい。

男に囲まれてる事が楽しいのか。

学生時代に味わえなかった雰囲気が楽しいのか。

多分、どっちもだろうな。

私はとことん構って欲しいのかもしれない。

私と一緒に居る人が私以外の人の事を考える事が許せないのかもしれない。

目の前に居る人には彼女が居て、横に居る奴には大好きな人がいて、私の事なんてどうでもいいんだろうけど、こうやって構われている事に安心する。

嫉妬なんて何処にもないもの。


「お前の事聞いていい?」

「いいよ、何でも聞いて」

「聞いてって言われても、何聞いていいのか解からんしな」

「うんとね、ずっと中学は不登校やってん、で両親離婚してさ~」

私は自分の出来る限りの全てをこのバーテンダーに話そうとした。

もっと私の事知って欲しい。

私こと知らないなんて言って欲しくない、そう思った。

「そんな、何でもかんでも話さんくってもえぇよ。話したくないこともあるやろ」

「あ、先輩、こいつ不幸な話でも笑って話す奴やから気にしなくていいっすよ」

「そうそう、笑えるんやからいいじゃん!聞きたくない?」

「聞きたくない事はないけど、いいの?昨日今日会ったような俺やで?」

「信頼してるってことなんじゃない?」

「うれしね」


この日、沢山の話をした。

私の興味ない話なんて一つもなかった。

偶に口出ししてくる男友達が、私の知らない話を始めようとしてたけど、バーテンダーの彼は私の話を一生懸命聞いてくれたんだ。

彼の話も沢山聞けた。

ただ、彼の彼女の話は一切聞かなかった。

聞きたくなかった。

これからも多分、絶対に聞かないと思う。

もっと仲良くなれたらいいな。


朝になって、男友達に送ってもらった。

シンデレラの気分だ。

ただ、私は幸せにはなれないし、これから変化も起こらない。

電話番号だってきいてないし、明日からまたバーテンダーとお客さんなんだ。

私、彼が好きだよ。

だけど、諦めよう。

もう、彼女の居る人は好きにならないんだ・・・。




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3.嫉妬

私は男友達が好き。

バーテンダーの彼に言ったところで、何が変わるわけでもなかった。

誰かが協力してくれるわけでもなく、ましてや私の心の中の熱い気持ちが大きくなるわけでもない。

ところで、その熱い気持ちとやらは私の中に存在しているのか・・・。

ただ、嫉妬というわけの解からない感情のみがソコにはあった。


いつものように、親友と二人カウンタに座る夜。

こうして過ごす夜も段々楽しくなくなってきた。

親友に紹介するの早まったかな・・・。

車の話、お酒の話、ブランドの話、私には全く興味がない。

くそー、仲間はずれの気分だぜ。

「なぁ、どんな車好き?」

私に聞くか?

その質問を私にするか?

「うーん、ごっついの」

「ごっついって言うても、色々あるやん」

「うーん、いかつくなくて、頼れる系?」

「ジープとかそんなん?」

「え!?」

「だめだめ、この子に車の名前はわからんよ」

あは、あははは、あははははは。

笑っとけ、笑っとけ!

あはははは、あはははは、あは、帰りたい。


親友は楽しいんだろうな。

一向に帰りたがらないな。

電車なくなっちゃったよ。

おーい。

つまらない。

っていうか、今何の話題で盛り上がってんだ?

あんまり聞き取れないな。

あ、この映画知ってる。

つまらないんだよね。

店のスクリーンに映し出された映画は、音もなく誰にも見られることなく進んでゆく。

つまらない、音のない映画を見終えてしまった。

どのくらいの時間、私は会話にも入らずこのスクリーンを眺めてたんだろう。

このスクリーンから目を外して元に戻すのが怖いな。


「俺、上がりやからそろそろ帰ろうか」

帰る!?

うんうん、帰ろう。

早く帰ろう。

「おぃおぃ、ちょっと待てって。そろそろやけど、まだやから・・・」

早く、終わらせな、私は外で待ってるよ。

店を出る私の背後から「変な子」って言う言葉が聞こえてきたけど気にしない。

親友さえついてこなかったことも気にしない。


あ、出てきた。

男友達と親友が並んで歩いている。

走れよ。

ムカツク。

「何か用事あったんか?」

「別に」

楽しくないだけだよ。

車の鍵が開く音がする。

私は直ぐに後部座席に乗り込んだ。

男友達が運転席のドアを開け、荷物を私に手渡しいた。

親友は助手席のドアを開ける。

私はいつも思う。

なんで、私の隣ではなく、助手席に座るわけ?

私はいつもいつも、二人の背中を眺めてた。


バーの映画のようだ。

二人の会話が聞こえない。

確かに、目の前に居るのは私の友達なのに。

左は中学からの親友で、右はカッコいいからって私が逆ナンした男。

そんな関係のない二人の笑い声だけが聞こえてくる。

この車の椅子気持ちが良いな。

目をつむったら眠ってしまいそうだ。


家の前まで送ってもらって、早々と自分の部屋へと駆け込んだ。

携帯がなる。

「ごめん、やっぱ用事あったろ?」

男友達からだった。

「別にって」

「何か怒ってたっぽいし」

「別に。今度遊びに行かへん?」

「二人で?」

「何か問題でも?」

「え!?」

「この間のデートの子とうまくいってんの?」

「ま、ぁ・・・まぁかな」

「よかったやん。応援してるで。別に友達同士が遊びに行ったって問題ないやろ」

「まぁな、じゃぁ今度の休みに映画にでもいくか」

「うん」


ひょんなことから、男友達と遊びに行くことになった。

とことん私は意味が解からない。

何がしたいんだろう・・・。

恋とかそういうんじゃない、ただ、私の友達なんだってこと。

親友に取られたくない、そう思った。




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